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オフィスを移転した

オフィスを移転した

島田 徹

株式会社プラムザ 代表取締役社長。システムコンサルタント。1998年に28歳で起業し、現在も現役のシステムエンジニア、コンサルトとして、ものづくりの第一線で活躍しつつ、開発現場のチームとそのリーダーのあり方を研究し続けている。

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先月、オフィスを移転しました。

思えば、代々木上原で14年ほど営業してまして、いい時もありつつも悪い時もあって、いざ離れるとなるとなかなか感慨無量のところがありましたが、そういえば移転直前に高校の先輩の経営者から「おたくは一生代々木上原でやっていくんだと思ってたよ」と言われたときには、「ああ、やっぱり移転してよかったな」と思いましたね。

そういう「成長する気がまったく感じられない」ところが、とてもよくなかったです。

対顧客的にも対社員的にも。

ただ、単に「成長してる感」のアピールのために会社を移転したわけではありません。

例によっていろいろ考える転機になったので、それらをちょっと記しておきます。

例によってぐだぐだぐだぐだ、考えてますね。

もっとシンプルに、「かっこいいところに行きたかったから、行っちゃいました!」と言えたらどんなに楽かってとこなんですが。


エンジニアにとって会社とはなんだろう?

他の業界に比較して雇用の流動性の高いエンジニアは、基本的に会社への帰属意識が薄いです。

でも「VPNあるし、BackLogとかGitHubとか使ってやれば会社に来なくてもいいじゃん?」と思われるとそんなことはないわけで。

もしそうなら会社は存在意義がありません。クラウドソーシングに集うフリーランスさんたちの形態に無条件降伏です。

組織で仕事をするということは、一人ではできない大きな仕事を協力してできるということです。

社員同士は、フリーランスの共同体とは違います。

利害が相当著しく一致するからこそ、別のメンバーができないことに関して惜しみなく(見積りなく)協力できるし、遠慮無く協力を要請できます。

一人でなんでも出来る必要はない変わりに、強く組織から役割を託され、そこで能力を伸ばしていかなければいけない厳しさもあります。お互いに尊敬するところは尊敬しつつも、ダメなところはダメだと言い合える仲であることが求められます。

会社は、利害が一致するメンバー同士でのシェアと切磋琢磨の場です。

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(出来上がったオフィスを使うのではなく、作るところから始めようというコンセプト)


フリーアドレスについて

前の狭いオフィスでもフリーアドレスを試行していました。

組織で仕事をする上で大事なことは情報やノウハウのシェアです。

「これについて先輩が前にやっていたような...。ちょっとこのソースでなぜ動かないのか、ここへ来て見てもらう?」

「今日はサーバーセットアップ。俺たちだけでもできるけど、念のためインフラに詳しい彼に横に座っててもらおう。」

そんな柔軟な席の移動が出来て欲しいものです。

せっかく一所で顔を合わせて仕事をしているのですから、「席が遠くて交流がない」なんて、あまりにもったいないです。

1whole.jpg
(執務スペースは真ん中に巨大なフリーアドレススペースを配置)


しかし一方で、フリーアドレスは周囲の人の集中力を削ぐデメリットがあります。前のオフィスでも確かにありました。

ただ、それはおそらくこんなのが原因です。

-パーソナルスペースがあまりに狭い

-今ここで話さなくてもいいようなどうでもいい会話をしている

-確保したワークスペースに進出して来られたり、強制的に移動を強いられる

距離が他からある程度離れているところで、誰からも進出される心配もなく落ち着いて仕事ができ、遠くでちゃんと意味のある会話をしていると、意外と気にならないものです。

それどころか「あ、それは前にやったことあるよ。ソース、探そうか?」と口を挟みたくなります。そういう行動がフリーアドレスのもっともよいところですね。

デメリットはゼロではないですが、メリットがそれを上回る(ことが十分に期待できます)。

それと「今日の昼どこで食事した」とか「連休はどこ行くの?」とかどうでもいい話はフリーアドレス席ではなく、カフェスペースでやるべし!

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(1段高くしたカフェスペースでON-OFFは明確に切り替える)

それはそれで親睦を深めるために必要です。

技術情報のシェアなどは社内SNSでやるべし。後から検索できるし、その会話に参加していなかった人も情報を得られます。

今、黙っては居られない業務だけ口にせよ。


あ、プラムザは基本的に誰もしゃべってないんです。。だからフリーアドレスはあまり他の人の作業を邪魔しないようです。



仕事場に格好良さはいらないのでは?

はい、そういう主張で15年やってきました。

でもふと最近、お客さんやパートナー会社の目が気になってきました。15年やって学生スタートアップのマンションオフィスのようなところですか、と。

きっとうまくいってないんですね。苦しそうですねと。

いや、実際うまくいってないし、日々苦しいのですが、そういう雰囲気を漂わせてしまうのはなにかとよろしくありません。

シンクロナイズドスイミングのように、水面に顔を出している時だけでも、笑顔を見せてないといかんだろうと。



瀟洒なオフィスでうまいこと新入社員を釣ろうという魂胆?

これは悩みどころでした。

いや、操作主義的なテクニックや詐欺的な手法は大嫌いなのでハナから「釣ろう」なんて気はないですが、「ちゃんと頑張ってますよ。将来見据えてますよ。」と無理した笑顔を見せることで、「なんかプラムザ、調子に乗って派手になった。本業を忘れてんじゃないのか?」と思われるのは拙いです。

以前、経営者の知り合いから聞いたエピソードが心に残ってます。

「あるベンチャー企業が、採用にとても苦労していて、上場したらもっとよい人材がきてくれると思い、頑張って上場を成し遂げた。果たして採用をかけてみると、やはりとても優秀な人が集まった。よかったよかった。。。と思ったのもつかの間、ふと気づけばベンチャー魂を持った人は応募して来なくなってしまった。それどころか、ベンチャー魂を持った昔からの社員は次々辞めてしまった。」

と。

上場ほどではないですが、オサレなオフィスにはそういうよろしくない効果がありそうです。

という理由から、いや、そもそもお金がないという理由から、無駄なお金をかけず「工夫」でオサレに見せようと考えました。

たとえばサイン。エレベータ降りてオフィスの敷地に入ったところにある看板ですが、これは会社としてのアイデンティティをアピールするために必要だとは思っていたのですが、何社かの内装会社に相談したら、壁からロゴを浮かび上がらせて天井からスポットライト当てて影作るとか、そういうよくある系の作りだと、最低20万くらいはかかるとのこと。

ただ、そういうのは確かに格好いいのですが、イケイケベンチャーの真似する意味はないです。うちはベンチャーじゃないですし。

どちらかというと「地味だけど意外とやる」くらいの方がいい。

そういうことに金をかけてると、「見栄え重視」の人ばかりが集まりそうだし、今いる社員は「社長くだらないことに金使い始めた」と言い出しかねません。

あ、でも元気でやってる感は出したい。

そんな難しいことを内装のヒトバデザインさんに相談しました。この会社とても頼りになります。

こんな風にしてくれました。総工費1~2万円。これで十分ですよ、うちクラスは。

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集中と昼寝について

昔からプラムザには1時間限定でヘッドフォンして集中して仕事してよいルールがあります。

シェルモードというやつで、これ開発者的にはとてもよい制度だと自負してます。(何人かから、「あれいいですよね!真似してます。」「取り入れたいと上司にかけあってます。」という声を聞かせていただきました。)

シリコンバレーのことわざにこういうのがあります。

15秒の作業の中断は、再開するのに10分かかる。


ただ、もうちょっと行けるのではないか?と思いました。

集中力が極めて続かないワタシ的には、もっともっと集中したいのです。


一方で、昼食後とかお腹が一杯になればどうしても眠くなります。眠い状態で仕事をすればバグを量産することになりかねません。そんなときは10分でも寝た方がいいですね。ちゃんと休憩時間つければ、1時間寝たって3時間寝たって構いません。

成果がすべて。寝るの大事。


ということで、上記二つの用途に使うためのブース(通称:瞑想の洞窟)を作ってみました。

3cave.jpg

(瞑想の洞窟はリクライニングチェアを2席配置)

中はこんな感じ。

4cave2.jpg

(ドラえもんにあった「夜を売ります」の巻を彷彿とさせます)

とても集中できるし、しっかり寝れる。手動の空気ダクトも完備。


と、そんなこんなで、他にも紹介しきれない工夫を凝らしているのですが、もしご興味のある方は是非遊びにいらしてください。コーヒーもブレーカーが落ちることを心配せずに入れられるようになりました。(あ、まったく取引上関係のない方はご遠慮くださいませ)


オフィス環境の整備は誰のため?

これはたぶん間違ってはいけないのですが、オフィス環境を社員の福利厚生や報酬的な視点から考えてはいけないと思ってます。

これらすべての施策は社員のためにあらず。すべては社員の持てるポテンシャルを最大限に引き出して、顧客満足につなげるためです。

結果的なアピアランスは同じようでも、設備やルールを社員のためと考えているか、顧客のためと捉えているかで、きっと利用する姿勢が変わってくると思います。