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本当は怖い起業の話(傾向編)
そろそろ脳内ビジネスの話をしようか
本当は怖い起業の話(傾向編)
株式会社プラムザ 代表取締役社長。システムコンサルタント。1998年に28歳で起業し、現在も現役のシステムエンジニア、コンサルトとして、ものづくりの第一線で活躍しつつ、開発現場のチームとそのリーダーのあり方を研究し続けている。
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常日頃から、能力のある人間はどんどん会社を作って、日本のこの閉塞感を打破し、世界に誇るよい商品・サービスと、そして新たな国内雇用を作るべしと思っている私ですが、
「起業なんて怖くないぞ、恐れずどんどんやれ」
というのも、原発事故で安全情報だけを流すような感じで、逆に不安を煽ると思いますので、今日は逆に最悪の話をしてみます。
本当は怖い起業の話
学生やサラリーマンのみなさん、起業を安直に考えていると、こんな怖いことが待っていますよ。
[1] 一人ぼっちになる
まず、当然のことながら、起業すると会社の同期や同僚のような、「同じ境遇の友人」というのがいなくなります。かつての会社の同僚達と飲みに行っても、もうサラリーマン共通の話題「上司の悪口」や「会社への不満」で盛り上がることは出来なくなります。
社長仲間と言うのはもちろん作れるでしょう。しかしそこには、どうしても譲れないプライドがありますし、辛気臭い愚痴話ばかりを言うような社長は、他の社長から次第に相手にされなくなります。不景気な話は、伝染するような気がして厭なものです。
実家などに行っても、親御さんが普通のサラリーマンだったりすると、会社経営というものに理解を示してもらおうというのは諦めた方がいいでしょう。
また、社長業は浮き沈みの激しい職業。景気のいい時に知り合った異性も、経済状態が悪化すると同時に離れていくことが多いようです。
[2] 仕事が来ない
サラリーマン時代に、「オレはこの職場の誰よりも仕事ができる!」と思っていても、また、同僚・上司からも異論が出ないほど出来る人間であっても、実際「仕事ができる」ことと「仕事が来る」ということは、まったく別ステージの話です。
たとえば、「ものづくり」が得意な人であっても、会社を興そうと思えば、営業や総務と言う仕事からは逃げることができません。いいものを作っていればいずれ客がつくというのは、起業家がきわめて陥りやすい幻想で、実際は、自分の制作物より遥かにしょうもない作品がどんどん世に輩出されていきます。
[3] 優秀な社員が採れない
起業して半年も経つと、社長は自分の仕事の手伝いをしてくれる人間が欲しくなるものです。電話番やFAX送信、オフィスの掃除、お茶出しなどの雑務や、自分のやっている作業のうちの定型業務などは、できれば誰かにお願いしたい。
そのような作業を自分自身でやっていたら、自分の類まれなる才能が十分に発揮できない、と。
ということで、アルバイトあたりから使い始めてみるのですが、平気で遅刻する、電話は出ない、ド派手なファッションで応接は無理、仕事中に携帯メールばかり、などなど「働くってレベルじゃねえぞ」という人間しか採用できなかったりします。
そんなんだったら自分でやった方が100倍速い!君はクビだ!
こんなことをしばらく繰り返すかも知れません。
[4] 借金する
初めは誰しも極力無借金経営を志すものですが、何年か事業をやっているとどうしても借金に手を染めてしまうものです。
ふと気の抜けた昼下がりに、地方銀行あたりの支店長クラスと若い営業が現れて、こう囁いて来るのです。
「社長、景気よさそうじゃないですか?」「でも、大きな仕事が入るほど、資金繰りは難しいでしょう?」「いっそ、300万くらい借りてみませんか?」「なに、役所の制度を使えば非常に低金利です」「必要無ければ、口座にそのまま置いておけばいいんですから」
じゃあ、100万だけ。。
こう言ってしまおうものなら、そこから借金生活がずるずるずるずると始まるわけです。
[5] ストライキに遭う
会社が少しずつ大きくなり、社員数が3人とかになると、必然的に社長の発言権が低下していきます。
会社は株主のモノ。株主が選任した取締役がすべての経営権を持つ。という会社法の基本などそっちのけで、仕事のできる社員が徒党を組んで意見を通そうとすることがあります。
これは小さい会社では、船の底に穴をあけて、船長を脅迫するようなものなのですが、その穴に怯えるのは大抵船長たる社長だけ。社員は別に船が沈んでも船員をクビになっても次に行けばいいのですから気楽なものです。
[6] 会社を乗っ取られる
会社を社員に乗っ取られる。そんなことは、商法の世界では想定されていません。しかし上記ストライキのような状態が長期化し、社員が顧客と親密になってしまい、社長とは形だけの存在になることも十分考えられます。
売上の入金口座まで変えられて、実質的な経営権はまんまと社員連合の手に移るとか。もちろんそんなことは法律的には許されませんが、冗談のような話、最後は動物的な強さ弱さだったりします。
会社を乗っ取るのは社員だけではありません。たとえば過去いろいろと借りのある親兄弟。あるいは、中学校の時の悪い先輩。こういった法律を超えた力関係を持つ人間が会社に入り込んできて骨の髄までしゃぶる、ということはしばしばある話です。
[7] 仕事を持っていかれる
やっと優秀な社員が入り、安定した仕事が回るようになってきたと思ったら、その社員が突然退職。なんと、新しく同業の会社を立ち上げて、顧客をあらかた持って行ってしまった、などということもよくあることです。そんなときは、たいてい周りの優秀な社員も大量についていってしまいます。これはかなり厳しいです。
仕事を持って行くのは、何も社員だけではありません。信頼していた下請けの会社が自社を飛ばして得意先と直接契約し始めるということもあります。いわゆる「中抜き」と呼ばれる行為で、これは実力のない会社の上と下で日常的に起こります。
[8] 倒産して破産する
原則論として、会社が倒産しても、個人の資産は会社の負債とは関係ありません。たとえば買掛金が300万ある状態で倒産し、個人口座に1000万あっても、そんなものは社長が個人で弁済する必要はありません。未払いになってしまっている社員の給料も同じです。
しかし、借金については、大抵社長が個人で連帯保証をしています。というかさせられます。
一般に、倒産するまでずっと無借金経営で頑張り抜き、力尽きるなどというのは考えにくく、借金してさらに借金して、ぼろぼろになって倒産するので、その連帯保証部分がドサっと社長個人に降りかかってくるのです。
まあ通常、家や車は取られ、破産します。
[9] 怨まれて刺される
社長と言うのは、営利を目的とする組織の長な訳ですから、どうしてもその活動の中で不利益を被る人が出てきます。利益の相反する権利関係の一方になる機会が増えれば増えるほど、人の怨みを買うチャンスも増えるのは、ある意味必然のこと。
相当悪徳なことをやっていない限り刺されるほど酷い怨みを買うかどうかは分かりませんが、本人的にはどうしても暗い夜道や駅のホームでは気をつけようと思うでしょうし、まあ概して常にビクビクしているものと思います。
[10] 自殺に追いやられる
社長。借金返せないんやったら、いい方法教えちゃる。
最後に男見せろや。な?
深夜の波止場で怖いおじさんたちに囲まれて、こんなことを言われるようです。
ええと、これでは誰も会社など作りたくなくなってしまうと思いますので、次回のエントリーで少しフォローしたいと思います。「対策編」です。乞うご期待。