誠ブログは2015年4月6日に「オルタナティブ・ブログ」になりました。
各ブロガーの新規エントリーは「オルタナティブ・ブログ」でご覧ください。

120円のコーラの原価が5円だったとしてもいいじゃないか、という話

120円のコーラの原価が5円だったとしてもいいじゃないか、という話

島田 徹

株式会社プラムザ 代表取締役社長。システムコンサルタント。1998年に28歳で起業し、現在も現役のシステムエンジニア、コンサルトとして、ものづくりの第一線で活躍しつつ、開発現場のチームとそのリーダーのあり方を研究し続けている。

当ブログ「そろそろ脳内ビジネスの話をしようか」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/noubiz/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。



今日ちらっとこんな記事が目についた。



別に会計に興味がないのなら無理に勉強する必要はないと思うけど、これで若い人が「俺たちは搾取されている!」みたいに思うことがあれば、それはよろしくない状態なので、ちょっとだけ解説を書いておく。

ネタにマジレスすんなと言われそうだが、あながちネタでもない人もいるような気がするので。


--------
別に120円のコーラの(ここで言う)原価が5円でも、コーラの会社は115円の儲けを出している訳ではない。

とりあえず一般的な損益計算書を書いてみた。

PL.png


こんな形になっている訳だが、上記の「5円」とは、Ⅱ.売上原価 の「原材料費」の部分のみを示しているに過ぎない。

通常、モノを製造するには工賃がかかるし、電気代がかかるし、運送費がかかるし、製造部門ではない社員の給料や光熱費、家賃などの間接費用がかかり、それらはすべて社外に流出する。それらを差し引いての利益を計算しなければ意味がない。

おまけに、試験研究を経常的に行わなければならないような業種だと、そのコストがかかる。製薬会社などはそれがものすごく大きいと聞く。

製造途中で壊れてしまった商品、売れなかった商品はすべてコストになる。

家電製品のようにただ倉庫に置いておくだけで、どんどん商品価値の下がっていくものがあり、それもコストだ。


なので、

「120円の商品の原価が5円とか、ふざけてんのか!」

とか怒る必要はない。

以上。


、、、ちょっと、短いのでこれに関連してもう少し。

年商という言葉がある。これについても変な風に捉えている人がいる。

「ついに内定決まったよ!年商10億の優良企業なんだよ!」

こんな物言いも非常に気になる。

年商とは年間売上高なのだが、上記の損益計算書をみてもらえばわかるように、その値がいくら大きくても、原材料費や外注費などの売上原価も大きければ、給与を出すための原資である売上総利益が無い、などということも十分考えられる。

一般的に仕入のある物販の会社は年商は大きくなり、仕入のないサービス業は年商が小さい。年商の多寡で、その会社が就職先として安心できるのかどうかはわからない。

では、企業の業績がよいか悪いかは損益計算書のどこを見るべきだろうか?

税金を取られる直前の「税引き前利益」だろうか?

いや、そこは、たとえば、前期に業績が悪くて設備や社屋などを売却したことによる不測の損失(または利益)が含まれてくる。なので、そこがマイナスでも悲観することはないし、大きくプラスになっていても楽観できないので、ほとんど意味のない金額だ。

内定が決まって親戚に嬉しい報告をするのであれば、注目すべきは「売上総利益(粗利)」である。

そこで十分な金額が計上されていれば、給与に回すお金がたんまりある、ということになる。

もう少し正確を期すなら、その額を従業員数で割った値というのがもっとも信頼できる指標になる。

売上総利益が10億円で、従業員が200人のA社


売上総利益が1億円で、従業員が10人のB社

を比較した場合、A社の一人当たり売上総利益は500万円、B社は1000万円だ。

B社は平均年収500万を出してもなんとかやっていけるかも知れないが、A社では平均500万は出しようがないということがわかる。

ということで、先のコメントはこうなる。

「ついに内定決まったよ!従業員1人当たり売上総利益が1000万の優良企業なんだよ!」



蛇足でもう一つ。

「部長、新規の法人顧客の契約取れそうです。商工リサーチで調べたら、年商は1億で、売上総利益は8000万です。粗利率が8割は優秀ですよね!」

というのもおかしい。

これから契約をしようという相手企業の業績を計るなら、注目すべきは粗利ではなく経常利益だ。(*1)

契約の相手方なら、給与や家賃というもっともダイエットしにくいコストを含めて気にすべきだろう。

給与を社員にたんまり出す会社が取引する上での優良企業とは言えないからだ。

ということで、先の営業マンの発言も、その姿勢と共に正しておく。

「部長、新規の法人顧客の契約取れそうです。商工リサーチで調べたら、年商は1億で、売上総利益は8000万、経常利益が4000万です。細かい数値は公表されてないのですが、社員数は10名とあるので、単純計算で平均給与が(8000-4000)÷10で400万。販管費が全額給与とは考えられないので、となると、まあ200万円台でしょうか。おおー、これは相当の鬼畜会社ですよ。きっと今後もがっぽり儲けていきそうです。契約で逃げられないようにして骨の髄までしゃぶってやりましょう。」


会計のことは、経営に参画しないかぎり、そんなに深いことを知っておく必要はないが、最低限「年商」、「粗利」、「経常利益」の意味と使い分けくらいは押さえておいた方がいいだろう。

(*1)減価償却費が経常利益を圧迫している場合は、その分はプラスしてみてあげた方がいい。そのコストはすでに支払ってしまった費用であって、今期の業績に関係ない。



もう一つおまけ。

簿記を知っている人がちょっと混乱してしまうトピックを二つ。


・ビジネスでは「粗利」しか出てこない。
 簿記を勉強しても「粗利」という単語は出てこないので、「アラリ」と聞くとビビるが、何のことはない。「売上総利益」のことだ。逆に「売上総利益」では通じないことがある。

・ビジネスでは「経常利益」しか出てこない。
 本当は、営業利益の方が大事だと思うが、一般的な会話では経常利益しか出てこない。ほとんど営業利益と同額になるので、大した問題はないが、なんとなく気持ち悪い。

ただし会計に近い業種はこの限りではない。