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絶対に展示されない標本を見た!

»2010年4月23日
別冊 誠Style

絶対に展示されない標本を見た!

岡田 大助

誠Styleの中の人。いまはちょっと遊軍記者、なのかな?


4月25日(日)に新宿の国立科学博物館のオープンラボに行くつもりのおかだです。CR-Z試乗記の続きは、またの機会に。

誠Style本誌で掲載した「国立科学博物館の裏側を見にいこう!」のネタ元のお話です。コラム執筆者の許可を得て、転載します。

■[コラム]@IT編集部員のつぶやき━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 絶対に展示されない標本を見た!

先日、国立科学博物館の新宿分館で開催されていた「オープンラボ」に参加してきました。上野にある「本館」とは異なり、普段は研究、標本管理を行っている分館が、年に1度だけ公開されるイベントです。めったに見られない貴重な標本や、専門家による詳しい解説を生で聞ける、手作り感あふれる素晴らしいものでした。今回はそこで見た、とある標本に心奪われてしまった話を。

ダーウィンの進化論に関する展示にて「これは通常、絶対に展示されない標本です」という前置きで登場したのは、白と黒の2色で作られた頭蓋骨のレプリカ。頭頂部の右側と左側、そして右あごと歯が数本、眉間の部分が黒でそれ以外は白。どうやら白いところは未発見部分のようです。この頭蓋骨は「ピルトダウン人」という原人のもの。なんの変哲もなさそうなその頭蓋骨は、進化の道筋から「とんでもなく」外れたものなのだそうです。

サルやゴリラ、オランウータンなどの特徴は「あごが大きく前に出ており、脳が小さい」というもの。そして人間は逆に「あごは小さく、脳が大きい」という特徴があります。進化の過程においては、二足歩行をし大腿骨がしっかりし、あごが小さくなってから脳が発達する、とされているそうです。その過程ですとまず「あごが小さく、脳がまだ未発達で小さい」という原人が登場し、人間に近づいていくはずです。

ところがこのピルトダウン人、「あごはオランウータン、でも脳はヒトと同じくらいの大きさ」だというのです。しかも発見されたのは、他の原人がアフリカで多く見つかっているにもかかわらず、ヨーロッパにて見つかったというのです。

ここでネタバラシ。ご存じの方はご存じかもしれませんが、このピルトダウン人とは考古学界では非常に有名な「ねつ造」の原人。頭頂部はクロマニョン人、あごはオランウータンのものを巧妙に組み合わせたものだったのです。そういわれてみると、左右の頭頂部、およびあごの関節といった、組み合わされるべき部分が都合よく欠損していたり、これみよがしに眉間の骨や歯などといった部分が都合よく発見されているなど、専門家から見ても「よくできている」という偽物なのだそうです。

解説をしてくれた研究員の方によると、これが作られた20世紀初頭はまだ進化論に対する風当たりが非常に強く、ダーウィンの「種の起源」ですらヒトの出自はあいまいに書かれていたそうです。そして文化の中心ヨーロッパでも「ヒトの起源はヨーロッパ以外であるべきではない」という考えも根強く、ねつ造が生まれた背景にはそのような想いもあったのだろう、ということでした。

研究員いわく、「これは考古学的には『汚点』ですが、その背景にあるものが興味深いと思い、展示してみました」とのこと。その狙いは大当たりしたようで、その後の質問コーナーでもピルトダウン人に関するものばかりが挙げられていました。考古学にも民俗学や宗教、歴史、そして人の想いが深く関係することを知った1日でした。

ピルトダウン人 - Wikipedia

                         (@IT編集部:宮田健)

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