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Web媒体だけ差別される

»2011年1月14日
別冊 誠Style

Web媒体だけ差別される

岡田 大助

誠Styleの中の人。いまはちょっと遊軍記者、なのかな?


今回は、本当にこぼれ話です。というか、本誌じゃ書けないグチとも言います。

記者発表会あるいはプレスを招待するイベントというものは、基本的に公開情報だけで成り立っています(発表会開催前あるいは情報解禁日時前に内容をばらすのはNGですが)。インタビュー取材などでたびたび目にする「おっと、これはオフレコで」という類のものはありません。だから、そこで得た情報は全部記事に起こしてもいいし、記者が自分の視点で整理してもいい、ということになっています。

この「整理」というのは、事実を捻じ曲げない範囲で、読者に内容が伝わりやすくするための「編集」という仕事になります。冗長だ、不要だと思う部分は記事にしないし、必要だと思えば前後を入れ替えて再構成することもあります。その場で得られなかった補足情報を入れることもあり得ます。記者という人間が記事を書くという時点で「恣意的だ」という批判は逃れられないのですが、それは今回とは別のお話ということで。

本題に戻ります。招待された記者は私たちのようなWeb媒体もいれば、新聞記者、雑誌記者・編集者(総合誌や専門誌)、TVクルー、フリーランスなど多種多様です。そして、それぞれのメディア特性に合う形で、得た情報を整理、編集あるいは加工していきます。多くの開かれた記者発表会やイベントでは情報発信者による区別はありません。

ところが、最近、Web媒体だけを特別視する記者発表会やプレス向けイベントにチラホラ当たることがありました。芸能人とか知識人がゲストとして登場するケースです。「動画で配信しないでね」とか「有料ページで使わないでね(お前んとこの客寄せで使うなよ)」とか、本題に関係ない女性ゲストの写真だけを数十ページも並べた「フォトギャラリー禁止」とか、Web媒体以前には想定されていない情報発信の形を規制するものです。

まあ、これらの規制は分からなくもないものなので、事前に申し合わせがあれば「了解しました」と納得のうえで取材に望みます。これくらいなら差別だとは思いません。納得できないのは次の縛りくらいです。しかも、事前通告ではなく会場で突然持ち出されるので、余計に「やってらんねー」と思うのです。

・記事掲載可能期間は、○月○日から●月●日までとする。

他媒体と同じ条件で取材を受けて、Web媒体だけは正当な理由もなく指定日時に記事を削除しろという要求は受け入れられるものではありません。記事の公開期間は編集部が決めるものであって、外部から指示されるものではないからです。もしも、雑誌のバックナンバーから記事を削除しろという要求があれば、常識的におかしいと思うのではないでしょうか?

確かにWeb媒体の中には一定期間で記事がなくなるものもあります。デジタルデータなのでサーバ上から削除することも可能です。しかし、問答無用で記事を削除しろという要求は、検閲※以外の何ものでもありません。記者発表会やイベントを取り仕切る代理店経由で、その都度、理由を問いただしていますが、納得できる理由を説明されることはないです。

※公権力による圧力ではないので正しくは検閲ではないのですが……ニュアンスとして近いので。

Web媒体のニュースは、最新情報であるのと同時に、公開されたタイミングでアーカイブになるという2面性を持っています。弊社の各媒体は、バックナンバーを蓄積することをコンセプトとして貫いているので、検索すれば2000年前後の記事もすぐに読むことができるでしょう。

残念ながら、上記の理由で取材しつつも記事化しなかったネタがいくつか存在します。申し合わせに過ぎないのでシカトすることもできるのですが、いまのところ「不当な記事削除要求には応じられないので、そもそも記事を公開しません」という態度をとっています。

もしも、世の中のメディアが取り上げているのに、一部のWeb媒体がスルーしているネタがあったら、そういうオトナの事情が働いているのだと哂ってください。