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8月25日 情報禍~情報が氾濫すると人類は滅ぶ?(#459)

8月25日 情報禍~情報が氾濫すると人類は滅ぶ?(#459)

森川 滋之

ITブレークスルー代表、ビジネスライター

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「情報化の推進」は大事だが、それに対応できる力がないと「情報禍」になってしまう、と松下幸之助さんは言います。

私は、講談社ブルーバックスの屈指の名著の一つ『マックスウェルの悪魔』を思い出しました。

☆☆☆

いま手元に同書がないので、記憶違いの個所もあるかもしれませんが、以下おおよそは間違っていないと思います。

この本は、永久機関がなぜ不可能かをテーマにした本です。

熱力学には第一法則(エネルギー不変の法則)と第二法則(エントロピー増大の法則)があります。

よく詐欺などで出てくる永久機関は、第一法則に関係するものです。これは科学的には完全に否定されています(詐欺事件はあとを絶ちませんが)。

著者の都筑卓司氏は、第二法則に関わる永久機関はもしかしたら可能ではないかという含みを持たせながらも、現実の技術力ではほぼ不可能だろうとしていたと思います。

エンジンのような動力装置は、温度差があれば動きます。酸素分子などを通すぐらいの大きさの穴があいた膜があり、左から右には分子を通すが、右から左に通さないということができれば、右側の密度が高まり、結果として温度が高くなります。

その交通整理をする小さな生き物を「マックスウェルの悪魔」と呼んでいます。この悪魔がいれば、エントロピーが減少することになり、第二法則が破れるのですが、そのとき永久機関も同時に可能となります。

ただ、そうなるとマックスウェルの悪魔も分子レベルの大きさにならざるを得ないのですが、そうなるとゆらぎが大きくて、とてもこのような制御はできないだろうということなのです。

「マックスウェルの悪魔」に関しては、そのような性質を備えたシステムは可能だという論文が忘れた頃に出現し、いまだに結論はでていないようなのですが、少なくとも実際に永久機関ができたという話は聞きません。

☆☆☆

さて、このような話がなぜ「情報禍」に関わるのかと言うと、情報にもエントロピーがあるからです。

高校1年程度の物理・化学の理解もあやしい私なので、おおざっぱなことしか言えませんが、熱力学におけるエントロピーも情報のエントロピーも、数学的には同じように扱えるようです。

そして、どうも情報にもエントロピーの増大法則があるようなのです。

これは、時間が経つにつれて(※)たくさんの尾ひれがつくことから、容易に想像することができます。部屋が放っておけば散らかるように、いやそれ以上に、情報は散らかっていき、しかも増えていくというわけです。

※ここ重要です。エントロピー増大の法則は、ある意味時間が一方向にしか流れないことと関係しているからです。

都筑氏が憂えていたのは、このことで、21世紀になると情報が増えすぎて、人間の情報処理能力が追いつかなくなり、そのために精神に異常をきたした人間がどんどん増えていき、それが原因で人類が滅ぶ――可能性がある、と都筑氏は言うのです。

この部分は、SFのショートショート風にまとめてあったので、強く印象に残りました。

☆☆☆

そんなことで、人類が滅ぶのだろうか?同書の初読時には中学生だった私は半信半疑でした。

仮に情報が増えすぎたとしても、コンピュータが処理してくれるから大丈夫なんじゃないか。私はそう思っていました。

ところが、今となって見ると、都筑氏の不気味な予想は、すでに半分現実になっているように思われて仕方がない。

コンピュータは確かに情報を処理してくれますが、これらを結びつけたネットワークは、毎日次々と情報を再生産し、今やまさに洪水と言えるような状況です。

総務省によれば、1996年から2008年までの12年間で消費者が受け取る情報量は637倍にもなったのだそうです(数字は、『戦略PR』による)。

頭がおかしくなってもしかたがない数字ではないでしょうか?

実際、無意味とも思われる殺人が年々増加しているように思える(統計はみていないので印象です)のですが、これは情報過多と関係しているのか?

今後いったいどうなるのか?

facebookのようなSNSは、ある意味情報洪水に対抗し、信頼できる情報源を確保するためのものだと言えるかもしれません。しかしながら、友達が増えれば増えるほど、情報処理に関わる時間がまた増える。

はたして、情報洪水の中で人類は滅ぶのか?

まったく予断を許さない状況だと言えます。

我々は、ここで立ち止まって、情報よりも知恵が大切な社会を取り戻す選択をしないといけないのかもしれません。

今日の一言)情報が氾濫することの恐ろしさを知ろう。

追記

本年の一日一言は、『松下幸之助 成功の金言365』を毎日1ページずつ読んで、自問自答するという趣向です。

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