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地震とネットとTwitter
誠編集長ヨシオカが日々考えていること
地震とネットとTwitter
Business Media 誠で編集長をしています。本ブログ&Twitterでは、Webメディアや紙メディア、ネットビジネス、携帯電話、非接触ICなどについての話題が中心になる予定。
3月11日午後、三陸沖を震源地とする大地震が起こった。マグニチュード8.8(追記:13日に9へ上方修正した)という観測史上最大の規模、宮城、岩手、茨城、福島など各地で断続的に大きな揺れが続き、これを書いている今(12日午前3時半)も1時間おきくらいに余震が続いている。
以下、都内で今回の地震を体験して気づいたことを書き留めておきたいと思う。
●安否確認にネットが大きな役割を果たす
震源地となったエリアほどではないにせよ、最初の地震のときは東京も大きく揺れた(震度5強)。私もそうだが、阪神大震災を経験していない多くの関東人にとっては、人生で最も大きな地震だったと思う。都内に限っていえば、地震の規模に比して、建物の倒壊や火災による被害がこの程度で済んだことは不幸中の幸いと言わなくてはならない。火事が少なかったのは、地震が起こったのが午後で、食事の用意などで火を使っていた人が少なかったのも大きいと思う。しかし午後に起きただけに、かつてない規模の「帰宅難民」を生むことになった。都内にいた多くの人たちは、今回の地震に「いかに帰宅するか」という形で向き合うことになったのではないだろうか。
私は幸運にも安全な場所(会社)にいたので、周りに怪我をした人も大きな物損もなかった。地震発生後から数時間、職場のテレビをつけ、ネットで情報収集をしながら仕事をすることになった。自分自身は会社の近くに住んでいるので問題ないが、まずは社内の同じ部署のメンバーの安否を確認し、会社に戻らなくてもいいから家に帰るよう伝えなくてはならない。
今回は都内で携帯電話の通信規制が敷かれており、特に音声通話は11日深夜になってもほとんどつながらない状態。データ通信もしばらくは圏外となっていて、地震発生直後は携帯メールもほとんど送ることができなかった。そんな中、安否確認で非常に役に立ったのがTwitter、mixi、Facebookだった。携帯(通話&メール)がどうしても通じない社員にTwitterのDMを送ったら返事があったり、mixiの日記やボイスで友人の「無事です」の文字を見てホッとしたり。夜になっても携帯メールの遅延が続くなか、Twitterやmixiのメッセージ機能を使って多くの友人知人と連絡が取れたことは本当に有り難かった。
Facebookのユーザーはまだ身の回りに少ないが、誠ブログではブロガーどうしの連絡をFacebookを使って行っている。仙台に住むブロガー氏の安否を気遣う書き込みがウォールに並ぶ中、「本人から大丈夫ですと連絡があった」との書き込みにみんなでホッとした。
逆にこれらの手段を使っていない相手(私の場合は親族)の安否を確認するのは時間がかかった。祖母の家にいくら電話をしてもつながらない。結局父が職場から歩いて行って元気なことを確認し、食事を食べさせたから大丈夫...という話を母からメールで教えてもらったのは11日の22時過ぎてから。最初に電話をかけようとしてから4時間以上経っていた。
災害のときに連絡がつかないのは本当に不安なもの。災害伝言板(各携帯キャリアが提供している)や、GoogleのPersonal Finder のようなサービスを利用することで連絡がとりやすくなる。特にTwitter、mixi、Facebookをやっていない人には、普段からこのようなサービスを使うように伝えておくことが大切だと改めて感じた。
→参考:通信各社の災害用伝言板(ITmedia NEWS)
●Twitterの情報拡散力
上記の連絡手段のなかでも、特に今回威力を発揮していたのがTwitterだ。テレビもまだ詳しい情報が分かっていない地震発生直後から、「山手線が止まって、乗客はしばらく車内にとどまった後線路の上を歩いて避難している」「○○市が停電している」「○○駅前が冠水」など局地的かつ具体的な情報が続々と入ってきた。
当初は「東京タワーのてっぺんが曲がった」などの話が多かったのが、時間が経ち、夜になるにつれて内容が変わってきた。都内からツイートしている人はいま自分がどこを歩いているのかや、帰宅難民のための避難所情報を多くつぶやいていたし(首都圏の鉄道網はすべて運転を見合わせていたため)、震源地近くの人たちは具体的に地名を入れて状況を報告したり、救援を求めたりしていた。mixiやFacebookのようなSNSに比べ、オープンなTwitterは情報が広がるのが速い。災害時に知っておきたい情報などがものすごいスピードで拡散していくのを見て、「Twitterはかなり普及したんだな」と改めて思った。
情報を発信するだけでなく、収集する手段としても、今回ほどTwitterが活躍したことはないだろう。歩きながら避難所を探していた人や、外にいてテレビが見られず、どうなっているのか分からない、という人がたくさんTwitterで必要な情報を追っていた。
ただ、良いことばかりでもない。Twitterではデマも相当広がっていた。100人近くにRTされたデマをいくつか見かけたが、中でもひどいなと思ったのが(内容的も広がり方としても)、「浅草のサーバルームにいたらサーバが倒れてきて怪我をした、助けて」と住所付きでツイートしていたもの。私は「これは大変!」と思った内容をRTするときは、いったんそれをツイートした人のページを見に行って、ほかの発言も見るようにしている(どういう文脈でそのツイートになったのかを知るため)。今回もそうしたので「あれ、これデマじゃないかな」と気づいたのだが、そのときにはすでにさんざん拡散したあとだった。特に今回のような災害時は、善意の裏返しでデマが広がるスピードも速い。センセーショナルな内容のものほど、RTする前に一呼吸。その発言の前後を必ず確認することをおすすめする。
もう一つ気をつけたいのは、「緊急時こそ公式RTを」ということ。すでに問題解決したときに、公式RTであれば元のツイートを消せばすべて消えるが、非公式RTだとオリジナルを消してもコピーがたくさん残ってしまう。すでに問題が解決したのに、ツイートだけが駆け巡っている......という事態を避けるためにも、緊急な内容のものほど、公式RTを心がけるべきだな、と今回思った。
●電池と電波は大切に......
取材先から会社まで歩いて帰ってきた社員によれば、「会社に電話しなくてはと思ったが、携帯も、固定も、どっちも電話がつながらない。公衆電話を見かけてもテレホンカード専用なので諦め、たまにある10円玉が使える公衆電話を見かけると長蛇の列。これに並ぶくらいなら歩こうと思った」とのこと。こうなるとやはり、手持ちの携帯電話に頼るしかない。「メールが送れないなら、TwitterやmixiやFacebookで連絡しよう」と思っても、やはり携帯電話やPCをネットにつなげるしか連絡手段はない。
「外にいるので不安だ、情報が知りたい」という人に、NHKやTBSなどのテレビ放送のUstreamが見られるURLを教えたり、ラジオ放送を聴けるアプリ「radiko.jp」のダウンロードを薦めるツイートも多数見かけた。携帯電話のワンセグを起動した、という人も多かった。災害のときこそ、テレビやラジオなどのブロードな放送コンテンツは重要、しかしアクセスする手段はこれまでとは変わってきているといえそうだ。
局地的な情報を必要な人に伝えるには、ネットを使った、しかもソーシャルな(草の根的な、でもいい)情報拡散が重要だ、と強く思わされた今回の地震。しかしネットから情報収集する人が多いだけに「携帯のバッテリーがもたない」と不安な声も多数Twitterやmixiで見かけた。携帯やPCのバッテリーを長くもたせる方法や、無線LANにアクセスする方法は知っておいたほうが良さそうだ。今回、ドコモショップが携帯電話の充電器とトイレを無料開放したり、FONが短期間WiFiスポットを開放していたと聞いて「大事なのは電池と電波だ」と改めて思った。