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なぜ新入社員は受け身なのか?

なぜ新入社員は受け身なのか?

原田 由美子

HRD(人材育成)サービスを提供するコンサルティング会社の代表です。

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上司やOJTを担当する先輩社員から、入社2年目を迎えるメンバーに「2年目に期待すること」を挙げてもらうと、「自分からコミュニケーションを取ってきてほしい」という期待が多いです。言葉を変えると上司や先輩は、メンバーに対して「受け身である」と感じているようです。そこで今回は、「受け身」な新入社員を「自分からコミュニケーションを取れる」ようにするためのヒントをご紹介します。

新入社員が「受け身である」とはどういうことか?
ここでいう「受け身」を、もう少し詳しくご紹介すると次のようなことを指します。
新入社員や若手社員に仕事を頼み、しばらく経ってから仕事の進捗を確認した時に起こることを、イメージしてみてください。

・えっ!ここまでしかできていないの?わからなかったら、早めに聞きに来てくれればいいのに・・・
・あ~、そうか・・・。言っておけばよかった。そう処理しちゃうよね。でも、確認に来てくれればいいのに・・・
・これをやったら次はこれって、他の人の仕事見てればわかるよね、ふつう。気を利かせてやると思うんだけどな・・・

など、上司や先輩がメンバーに対して期待する「自分からコミュニケーションを取る」ことというのは、途中で確認や報告(コミュニケーションを取り)にくることや、仕事の前後の流れを理解し気を利かせて対応したり、自分から進んで勉強したりすることを指します。

そのような期待があることから、新入社員のフォローアップ研修では、「自分からコミュニケーションを取る」ための考え方とスキルトレーニングを取り入れた内容をリクエストされることが多々あります。

このようなリクエストを頂いた場合、私が講師として担当する研修では、メンバーの現状を確認することから始めます。
具体的には、研修開始後早いタイミングでグループワークを入れ、行動を観察する場面を設けます。
そして、ワークを指示する場面で一工夫します。
指示の一部を曖昧に伝え、その後の様子をうかがうのです。

すると多くの場合、メンバーは次のようにグループワークを進めます。
メンバーA:ねぇ、さっき言っていたこれって、どう考えたらいいの?
メンバーB:こんな感じでいいんじゃないの。
メンバーC:いいと思う。大丈夫。大丈夫。後は発表で上手くやれば。

・・・と言った会話があちこちのグループから聞こえてきます。
このことから彼らは、曖昧な指示をもらうと「指示を出した人に確認する」というよりは、「聞きやすい人に聞き解消する」ということが多いようです。

その結果、指示者の意図に沿う成果物が作成できず、撃沈します。

この場合は「指示者に確認できていない」ことに気づいてもらうことが目的です。そのため、「確認できていないこと」に気づいてもらえれば良いわけですが、もしそれが指示をもらった時の基本習慣だとすれば、上司や先輩が困るのも無理はありません。

なぜ確認ができないのか?
そもそもなぜ確認ができないのか?まずはその要因を考えてみます。私が見たところ次の3つに分類できました。
1つ目は、「指示者に確認する」という考え方がない場合
2つ目は、「確認するべきことが、言葉で上手く表現できない」場合
3つ目は、「上司や先輩が忙しそうで聞きづらい」という場合

ちなみに、新入社員に直接その理由を聞いてみることがあります。すると、「上司や先輩が忙しそうで聞きづらい」という意見が圧倒的です。

しかしそれは本当でしょうか?

彼らの行動を見ていると「指示者に確認するという考え方がない」と見る方が、今後につながる打ち手が打ちやすいように思います。
というのは、最近はインターネットが普及し、誰でも「検索」すれば、自分が必要な回答を得られます。
また、その回答の中から「自分の価値観に合うもの」を選択することも可能です。
自分が正しい、自分が良いと思った情報が全てであると思い込みやすい傾向があるのです。
そのため「指示者に確認する」よりも「検索」し「自分がいいと思ったやり方(考え方、進め方)」で進めがちなのです。

一方仕事はどうでしょうか?
仕事は「仕事を依頼する側の価値観」が重要です。仕事を依頼する側が必要とするものでなければ、それは評価されません。
そのため、仕事を依頼する側の価値観に沿うことが大事です。そこで必要になってくるのが、仕事を依頼する側に確認するという行動です。

社内であれば、確認せずに上手くいかないことも、後でフォローが可能です。しかし、社外は違います。確認しなかったことで、仕事が取れなかったり、クレームになることもあるので、「確認できる」のと「確認できない」のでは、大きな差が生まれます。
そのため、「指示者に確認するという考え方が無い」という風に考えて、「確認することを基本習慣化するよう指導」する方が効果的だと言えるのです。

「確認」を身に付けるコミュニケーション3つのポイント
さてそれでは、新入社員に「確認する」というコミュニケーション力を身に付けてもらうための例をご紹介します。
本当の意味での「確認」は思考力を要するので、難易度が高いコミュニケーションスキルです。そのため、知識や経験なども必要です。
そこで、ここでは「確認する習慣を身に付けるためのトレーニング」として、上司・先輩側が簡単にアプローチできるコミュニケーション上のポイントを3つご紹介します。

ポイント1:コミュニケーションを取るタイミングを決めておく
・「私ってさ、指示が大雑把らしいんだよね。だから、申し訳ないんだけど、わからないことがあったら、都度聞きに来てもらえる?」
・「私もさ、忙しいと余裕がなくて、表情が厳しいから声掛けにくいと思うんだよね。だから、朝と夕方の○時~は5分ずつ時間を作るから、わからないことは、メモに書き出しておいてくれる?」
と、コミュニケーションを取るタイミングを決めます。
ポイントは、確認に「顔色をうかがう必要性はない」ことを理解してもらうことと、お互いにコミュニケーションを取りやすいようにしておくことです。

ポイント2:確認の仕方を伝えておく
入社直後でない限りは、1~10まで確認する必要はありません。しかし、新入社員や若手社員の多くは「ポイントを絞って確認する」という方法を知らないようです。そのため、「これってどうすればいいですか?」というように、丸投げで確認してくることも多々あります。そこで、次のような言い回しも合わせて伝えてくと効果的です。
・「~~までは理解できたんですが、これがわかりません。ここを教えてください。」
・「~~をこのように理解したんですが、これでいいですか?」
・「~~とおっしゃってましたが、私としてはこうした方がいいと思いますが、これでもいいですか?」
・「~~は、このようにお聞きしたんですが、調べたところ・・・・・という方法もあるようです。これでもいいですか?」
研修では、上記のような言い回しを伝えると、その後は、確認そのものも的が絞れたものになります。メンバーも自分達の考えを表現しやすくなるので、取り組みやすいようです。

ポイント3:仕事の前後の流れや目的(や背景)を伝えておく
確認できずに手が止まっている場合、その原因の多くは、伝える側の説明不足に起因しています。
例えば、メンバーに「議事録作っておいて」と頼んだとします。実はメンバーは「議事録」を見たことはあっても、作成するのは初めて。そんなケースでは、本来は議事録の作成→保存までの流れを一通り説明し、誰がどのような目的で見るのか、必要な要素は何か、書き方の形態はどうなっているか、保存方法などを、「なぜそうなのか」を含め伝えておくことが大事です。
しかし実際には「これを見本に作っておいて」となっていることが多いのです。
そのため、どうしてよいのかわからず、手が止まりやすくなります。
また、何とか頑張ってやりきったとしても、ポイントが大きくズレていることが多いものです。
その結果、努力が実らないためメンバーはがっかりし、より具体的な指示を求めるようになります。
更に、上司や先輩は大幅に修正を加える必要が出てくるため、二度手間になります。
しかし、仕事の前後の流れや目的(や背景)をふまえて理解していれば、多少ポイントがずれることになっても、軌道修正がしやすくなるため、もう一度自分で修正させることもできます。仕事を最後まで、自分でやりきらせやすくなります。

新入社員や若手社員が「受け身だな」と感じたら、上記3つのポイントを参考にコミュニケーションに工夫し、取り組ませてみてはいかがでしょうか。私の経験では、最初は確認の「量」が増え、その後「質」が高くなり、仕事が進めやすくなる上に、成果も上がります。

よかったら、試してみてください。

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