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REGZA Tablet AT703 ファースト・インプレッション

REGZA Tablet AT703 ファースト・インプレッション

石井 力重

アイデアプラント 代表。著書に『アイデア・スイッチ』。専門領域は「創造工学」。クリエイティブ・リーダを助ける道具を作っています。

当ブログ「力重の「ブレインストーミング考」」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/ishiirikie/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


先週出荷開始されたREGZA Tablet AT703の実機を貸していただいた。

今回、アイデアの道具として2日間使い込んでみた立場から、感触を述べたい。

筆者は普段はコレクトの情報カードを大量に使う。年に2000~5000枚ほどアイデアメモを書く。

この二日間はその作業を全てこのタブレット(以下、AT703、もしくは、レグザタブレットと記す)で行った。

良い点、工夫して使ってみた点、今後に期待したい点を述べる。


【1】「過去にない体験をもたらす素材・精度とアプリ」があった。

1-1 ペン

AT703には、デジタイザーペン(書き込むためのペン)がついている。(写真のRのペン)

筆者はThinkPad X220 Tabletのユーザだが、そこについているペン(写真のTのペン)と写真で比較するとこうだ。

pen_AT703.jpg

ThinkPadのペンはなかなか良いペンだ。ペン先の合わせにくさをのぞけば質感の高い表面素材で、シンプルなデザインで本体に挿しておける点もいい。

AT703のペンはそれに比べて「最大径は太く、くびれがあり握りやすい」。一方で「すべすべで握った質感に劣る」。そこで、滑りにくい表面のシールをはった。(緑色の部分は筆者が勝手に張ったもの。新品は黒一色である。)

AT703のペンのペン先は、フェルト素材だ。

フェルトというと、クニャクニャの生地を連想するが、カチカチである。いうなれば、、、綿棒を水に浸してそのまま乾かした後の「カチカチになった綿」を想像してほしい。意図的に爪でしごけば毛羽立つ。力を込めてペンを画面に押し付けても折れたり目に見えて削れるということもない。

ThinkPadのペン先は樹脂製。実はPCの画面に傷がつくのではないかと思うぐらいタッチは固い。

なお写真のペン、右から二番目はSu-Pen。iPadに絵を描くときに使う。一番右は普段の愛用しているペン。本物のアナログのペン。大きさ、太さ、形状しては、AT703のペンは、一般のペンに近い。あとで分かるが、長い時間、使うことが苦でない。ThinkPadのペンでも長い時間書くが、かけるけれど苦はある。


1-2 タブレット画面

AT703の表面は、通常のスマフォ・タブレットの表面よりも、μを持たせているという。

tablet_AT703.jpg

しかし、指で触れて「あ、梨地だな」と思うほどではない。「うーん、そういわれてみれば、iPadの表面の固く平坦な面よりも、すこし指の滑りが悪いかなぁ、でも気のせいといわれたら、そうかもしれない。」といった所。

実際に書いてみると、「紙を書くような感触」とはいかない。が、今までに無い「ペン先のかさささ感」がある。良いペンとそれに合う紙を合わせて使うと、ペン先というのは、適度な「かさささ感」を持って滑っていく。それが「かさささ感」だ。しかし、今までに紙とペンでは感じたことがない「かさささ感」があった。

スマフォの画面は、仮にDSペンのような固いプラでも文字をかけたとして、つるつるして書きにくい。これを、レベル1として、最高の紙とペンのかさささ感をレベル100としたら、ホワイトボードマーカーとボードはレベル10~20といったところ。このタブレットのかさささ感は、レベル70前後と感じた。

このレベルはあくまで筆者の感性イメージの説明を数値としての表現へ試みただけある。

長いので端折るなら、レグザタブレットの書き心地は、紙に書くことの0.7掛けの書き味だ。

なお、後で試してみて分かったが、ThinkPadとレグザタブレット、両方、互いのペンが使えたので、戯れに、ThinkPadの画面を、このフェルトの先端のペンで書いたら、かささかとこすれる感じが絶妙で、書き心地は紙に近かった。レベル85~90ぐらい。ただ、紙にフェルトマーカーで書いたような重たいすべり感で長く書くとなればまた不満かもしれない。

レグザタブレットのペンは、いろんな設計と調整の末に、このペン、この画面表面、になったのだろう。

1-3 アプリ「TruNote(トゥルーノート)」(精度編)

書き心地を堪能したら今度は、精度がどれほど出ているのかが気になる。

そう思って、お奨めのアプリであるTruNoteをこの二日間使ってみた。

以下、詳しく述べたい。

精度はかなり高い。

実際に書いてみたものを見てほしい。

適当に線を引くだけならば、ペン先がずれていようが、「ずれているかどうか、分からない」。店頭で適当に、ランダムな線や点を描くだけだと精度がすごく良いか悪いのかは、分からない。

点を沢山打って、その点に触れないように進んでいく、ずれないように線でつなげる。幅広のペンで書いた道を細いペンで落ちないようにたどる。といったことしてみた。

tamesigaki.png

非常に良い。

精度に関して、筆者の感覚イメージを述べるなら、従来のタブレットを『床に置いたパチンコ玉に、高さ30センチのとこからテニスボールを落としてぶつける』ような感覚だとすると、AT703は『床に置いたパチンコ玉に、高さ5センチのところからパチンコ玉を落としてぶつける』ような感覚だ。どっちも当たるが、前者はどこで当たっているのかわからない。大幅に狙いやすくなったのだ。

ただし、右端1.2cmのエリアに入るとペン先がかなりズレる。紙一杯に書く人はそこだけ強い違和感に出会うだろう。上記のイメージで言えば、予測しにくい強磁場があり狙ったところにパチンコ玉が落ちない感じである。

アプリ内でペン種類は、5種類から選べる。何が違うのかを見るために、太さMAXに設定して、各ペンで試し書きした。最初は触れるかどうかのギリギリ⇒思い切り強く描く⇒最後は押し付ける力を抜いていってギリギリ触れる程度で推移させた。

6pens.png

【万年筆】の「極細」から「極太」までの太さの変化がわかる。【万年筆】の太さ最大はどのペンよりも大きい。意図してこの太さレンジを使うことは難しいが、ペンの筆圧を感知する能力の高さはわかった。

ちなみに他のペンの場合は、それほど、太さが変わらないので、筆圧を感じて太くなったり細くなったりしてほしくない場合は、【シャーペン】や【マーカーペン】がいいだろう。【フェルトペン(サインペンか)】は、筆圧で薄さが変わる。あと【エンピツ】は、【万年筆】には劣るが強弱が付く。あまりに細くしたくない場合は、【エンピツ】がいいだろう。


1-4 アプリ「TruNote(トゥルーノート)」(機能編)

このアプリ、検索機能が非常によくできている。

ペンの精度の良さもあるからできるのだろうけれど過去に書いた全ノート・全ページを対象に、手書き図形を検索ができる。これがとても力強く機能する。ただし、完全に図形を理解して100%の精度で検索してくれる、というレベルを期待はしてはいけない。「☆」とか、「半円」とか「吹き出し」の図を検索エリアに描く。すると、数秒でそれに近いものを検索して出してくれる。メモに絵を良く書く人は、かなり便利だ。

文字での検索も当然できる。図形に比べると、文字は認識性の精度がかなり高い。ありがたいのは、OCRなんてとても無理そうな悪筆なのに探してくれるところだ。

色々試したところ、AT703がほぼ100%の確率で探し当ててくれた単語があった。筆者が非常によく書く文字『ideamemo』だ。

この文字を書いたページはもれなく検出してくれた上、『ideamemo』というつながった文字だけでなく『idea』と『memo』をノート上の離れた場所に書いたものでさえも、検出してくれた。

Trunote_2.jpg
       ↓

Trunote_3.jpg

これは、筆者が長年繰り返し書いてきた単語だから、悪筆ながらも何度かいても筆跡にブレがないことが好影響しているのかもしれない。

その他、かなりの悪筆で書いてみた文字も高い精度で認識していた。

これは、文字データとして一致しているかどうかを見ているのではなく、線の群を描き順をふくめたデータとしてもっていて、それに類似するものをもっているのかと思われる。

図形よりも、文字の認識が良いのは、一つの塊のデータが文字の方が多くの特徴点をもっていることと、文字というのは図形よりもずっと(汚いなりにも)筆運びにブレがないから、ではないだろうか。


手書き時の工夫 ⇒ よりスマートな対処方法が機能の中にあった。最下部に記す。

使いにくい所は自分で工夫した。極めてアナログな方法である。

kufuu_.jpg

TruNoteを使って、ページにびっしりと文字を書きたい。しかし、手首の辺りがホームボタンエリアにふれてしまい、突然画面がきりかわることが何度もあった。さりとて手首を上げたままでは長い時間かけない。こまった。そこで、厚さ2㎜の樹脂マットを細長く切り、ホームボタンの上に置いた。大概のタブレット、スマフォは、2mm厚以上の樹脂シートをおくと、そこは無反応エリアになる。これで、ホームボタンを押してしまう問題は解消された。

TruNoteがよくできているだけに、"ホームボタンがここにあったら、下の方を書くときにユーザさんが難儀しますよ"という議論を相当開発者さんはずいぶんしたのではないだろうか。折角ガシガシ手書きできるデバイスなのに、そんなところにホームボタンがあったらだめだ、と。しかし、基本部のデザインは、アプリごとの都合ではいじれないということで、最終的にこうなっているのではないか。

分からないがいずれにしても、樹脂マットは、ホームセンターでに行って「デスクマット」として売られているもので充分だ。それを、ペっと貼っておけばよい。吸い付くので接着剤も要らない。


なお、どうしても工夫では越えられない点もある。今後への期待としてそれも記したい。それは、手書き中に画面に触れている手首が、ページをわずかにずらしてしまうが、そういうことこをすると何度かに一回は「しばらくお待ちください」というメッセージとがで、画面が大幅に暗くなった状態で2秒ぐらい待たされる。たまたま、筆者の手首の癖が、影響しているなのかもしれない。


このタブレットは買いか否か。

筆者は既にiPad Retinaディスプレイモデルと、ThinkPadがある。仕事をするには十分である。更に新しいタブレットが出ても、これまでは、特に食指は動かなかった。

しかし、今回、レビューに取り組み、二日間でも、手書き文字をデジタルでガシガシ行う、という体験をしてみておもったのは、「アイデア・ストッカー」としては総合的な利便性が高く、はじめて、従来の紙のノートや情報カードを超えるに出会ったと感じた。

愛用しているiPadでは、残念ながら大量の文字を手書きすることは難しい。取り組んだが続けようと思わなかった。「ビューアーとしては現時点では最良だとおもう」というその評価はいまだ変わらないけれども。

そういう意味では、「手書きで、アイデアメモをたくさん書く」ような、筆者と同じタイプの人にはお奨めしたい。TruNoteというアプリの専用マシンとしてAT703を手に入れる価値は十分ある。マメモ、とか、ブギーボードのような、「手で書くだけの単機能ガジェット」が好きで使い倒している、という人であれば、である。

総合的にみても、画面のきれいさはiPad Retinaと同じである(数字上は勝っているが、私の享受できる上限をこえているようで同じ程度に良く見える。)電池の持ちは、Androidタブレットとしてはかなり健闘している。

ただ、電池の持ちについてもろ手を挙げてお奨め、とはいかない。4時間、手書きを試しつづけたら満充電から残り15%になった。ヘビーな使い方だったのかもしれないが、電池に関しては、iPadの方が長く持つかもしれない。

この点は絶対的なものではなく今後の省エネ性能に関するバージョンアップなどで事情は変わるかもしれない。

この後もレビューを続けて、これらについても知見をためて、第二報を報告したい。



追記:

ガシガシと手書きをしたい時に、思わずホームボタンを手首で押してしまう、という点について、筆者は「樹脂製の2㎜厚のプレートを、ホームボタンの上に置く」という超アナログな対処を行っていたが、もっとスマートな方法が、もともとアプリの設定の中にあったので追記する。

ナビゲーションキーの左寄せのやり方

(1)TruNoteアプリを立ち上げる。(どこかのページが開いている場合は、アプリの中の「デスクトップ」(数冊のノートが散らばってみえる状態の画面)に移動する。

(2)画面下の方に出る「〇に上向きのクサビ」ボタンをおし、メニュー(ノート一覧、ノートを追加、・・・)を出す。

(3)「設定」(歯車二個のアイコン)ボタンを押す。

(4)「ナビゲーションキーの設定」を押す。

(5)「左側に表示する」

ホームボタンを含むナビゲーションキーが左側に寄る。


実際にしてみると、手首が最下部のボタン(ホームへ戻るボタン等)を勝手に押してしまうことがほとんどなくなった。(筆者は右利きである。左利きの方の場合は、(5)で「右側に表示する」を選ぶとよいだろう。)







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