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アイデンティティは形にあらず ~ポメラDM100を使ってみた~

アイデンティティは形にあらず ~ポメラDM100を使ってみた~

野原 淳

キングジムファイリング研究室でファイリングや机の整理のしかたなどの指導・提案をしています。

当ブログ「ファイリングは捨てることと見つけたり」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/jun_nohara/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


 みなさんこんにちは。キングジム、ファイリング研究室コンサルタントの野原です。

 ファイリングがうまくなっていくと、仕事が見通せるようになっていきます。仕事が見通せると、どこに無駄があるのか、どういうツールが自分の仕事を本当に改善してくれるのかを見極められるようになる、というのが私の考えです。

 さて今回は、11月8日に発表された新しいポメラ、DM100を使ってみました。いったいどんなマシンなのか、楽しみです。

 

折り畳みキーボードを廃した新しいデザイン

DM100_naiyo.jpg DM100の最大の特徴、それはトレードマークだった折り畳み式のキーボードを潔く止めてしまったことではないでしょうか。これにより、DM100は今までにない薄さを実現していますが、本体は大きくなってしまいました。この変化が受け入れ難いか歓迎されるかは利用されるみなさんのワークスタイルや使用環境によって大きく異なることでしょう。

 今まで(DM5、DM10、DM20)のような形だと鞄の下に溜まってしまうので嫌だ、という理由で敬遠していた人たちに受け入れられる可能性はあります。薄いので出し入れもしやすく、ある程度の大きさがあるので、鞄の中で遊ばず、収納したときのままの位置にいてくれます。

 下の写真はDM100をA4用紙の上に左下に端を合わせて置いている状態です。

DM100_okisa.jpg 本体が大きくなったお陰でできた画面脇のスペースには6つのボタン(=サイドキー)が並んでいます。新しく国語、英和、和英辞書が内蔵され、それらにダイレクトにアクセスできます。うろ覚えの言葉などで、この使い方で正しかったんだっけ...?と不安になったときなど、編集中に対象となる文字を選択して「国語」とかかれたサイドキーを押せば調べられるので便利です。

 辞書は株式会社大修館書店の「明鏡国語辞典MX」「ジーニアス英和辞典MX」「ジーニアス和英辞典MX」の3つが入っています。

 画面にはバックライトもつき、 夜の車の中や、機内など暗い場所での作業も不自由なく出来るようになりました。Bluetoothも搭載され、iPhoneのキーボードとしても、パソコンへのファイル転送としても使えます。(下の写真はファイル転送を行うためのペアリングをしているところです)

DM100_Bluetooth02.jpg 表形式の入力ができるようになったのも大きな変化です。カンマ区切りのcsvファイルとして保存され、拡張子もcsvになっています。QRコードにすることもできますが、そのときはカンマ区切りとダブルクォーテーションで囲まれたテキストになるので、メモ帳などに貼り付けたあと、拡張子を手作業で変更する必要があります。

DM100_sheet.jpg 入力内容が「商品名、個数、金額...」みたいな場合や、あらかじめExcelに持って行くと分かっているものは表形式で作成した方が入力も再利用もラクです。

 サイドキーにより、カレンダーやQRコードへのアクセス性が良くなったのもこれまでの機種から便利になった点です。

 iPhoneユーザーは専用のポメラアプリがあるのでQRコードを介してiPhoneに転送して、メールで送るのが圧倒的に便利です。専用アプリを使えば、複数のQRコードになっても、認識するしたらすぐ次のコードを表示させ、全部を読み取ってアプリ内でつなげて一つのテキストにしてくれます。

 Androidユーザーからすると羨ましい限りです。写真はAndroidを使っていますが(アプリは「Goggles」)、これだとQRコードが複数に及ぶと、QRコードリーダーアプリを起動して読み取り、それをクリップボードに貼って、QRコードアプリを一旦終了させ、テキストエディタのアプリを起動してクリップボードから貼り付け、またQRコードアプリを起動して2つ目のQRコードを読み取って終了させ、テキストエディタアプリをまた起動してさっきの続きに貼り付け、またQRコードアプリを起動し...と言うことをQRコードの数だけやらなければなりません。これはさすがに面倒ですが、キングジムの専用アプリならそう言うことなく次々と読み取れるわけです。

DM100_QRcode.jpg

 

これで「ポメラ」と言えるのか?という議論

 「折りたたみキーボードがない上に、あれもこれも機能が追加されたら、これはもはやポメラじゃない!」と、私は思いました。枯れた機能でも厳選し、目的を明確にして磨きをかける、それがポメラではなかったのか?

 しかし、今となってはバックライトもBluetoothも辞書機能も、とりわけ珍しい機能ではありません。そして、やっぱりテキスト作成にあると嬉しい機能に特化して厳選してつけていることに変わりはないのです。

 さすがに折り畳みキーボードまで捨ててしまうとあのギミックのファンだったユーザーからすれば、相当残念でしょう。しかし、折りたたみを廃する事によって得られる安定感や、鞄の中での収まりの良さを取ったのでしょう。逆に言うとその決断には「9人から要らないと言われようとも、1人からは絶対欲しいと思われるモノを」という精神が消えていないことを感じさせます。

 形や機能は相当変わりましたが、ポメラの精神は変わらず、今に合わせてポメラを再定義したらこうなった、と解釈しています。

 

後からジワジワ「来る」タイプ

 前回アップした「就職活動をしたことがないサラリーマンの私から、一つご提案」のブログは全てDM100で書いたものです。ポメラ発売当初から私の環境もいろいろ変わりました。誠ブログを書くようになり、AndroidでGmailを簡易クラウドテキストエディタとして使用している今の私にとっては、DM100なら出先での文書作成環境は相当改善してくれそうです。

 本体が折りたたみでなくなったため、入力時の安定感は増しています。キーボードはストロークは感じるもののかなり浅いです。押し返してくる感じも強くありません。この薄さのせいでしょうか、ガーっとブラインドタッチがのってきた時に、自分は1回押しのつもりなのに、「連打」したと判断されるときが数回ありました。しかし、そうしたこともこの薄さが手に入るなら我慢できない範囲ではないように感じます。

 あとは鞄に入れやすい、出しやすい形になりましたね。折りたたみキーボードというアイデンティティは失ったのが最初はとにかく残念でしたが、かばんの中で安定するというのはそれを補って余りあります。

 私は機器に身体の方を合わせてしまうタイプで、キーボードにこだわりがある方ではありません。なので、むしろこの薄さでこれだけのクオリティを出しているのはすごい方だと思ってしまうのですが、こだわりのある方はどう評価するのでしょうか。楽しみです。

 

 とまぁ、いろいろ書きましたが、振り返ってみると使い出しはホントに普通でしたね。形がこれだけ変わったんだから書くことも相当あるだろうと思っていたのですが、違和感なくすんなり入れてしまったので、逆に書くことがなくて困ってしまいました。

 今もDM100で書いているのですが、第一印象とは変わって、結構良いな、って考えが徐々に大きくなってきている自分に気づきます。少し前に社内で試作品を見たときには「これがポメラですか?」くらいのことを言った訳なんですが、こうしてしばらく使ってみるとこう...徐々に「来る」もんがありますね。

 言い換えれば文章を書くことに集中させてくれると言うこれまでのコンセプトを、形は変わってもちゃんと引き継いでいるからなのだと思います。

 形に関してはユーザーの選択肢が広がった、と解釈すれば良いのではないでしょうか。DM100の形や機能が自分のライフスタイルに合う人はDM100を、DM20が合うならDM20を撰べば良いと思います。

 どの機種を選んでも、ポメラの精神は同じように感じていただけると思います。やはり、自分のワークスタイルを見極めて撰ぶことが大切ですね。