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重要事項を優先する ~『7つの習慣』より~

重要事項を優先する ~『7つの習慣』より~

野原 淳

キングジムファイリング研究室でファイリングや机の整理のしかたなどの指導・提案をしています。

当ブログ「ファイリングは捨てることと見つけたり」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/jun_nohara/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


 またしてもスティーブン・R・コヴィー著「7つの習慣」の話になります。

 この本はとにかくファイリングに通じるところが多い内容に思いましたが、特にそう思ったのが第3の習慣、「重要事項を優先する」でした。

 

【時間管理のマトリックス】

 重要度が高い・低いを縦軸に、緊急度の高い・低いを横軸にとった、「時間管理のマトリックス」はたくさんのビジネス書に出て来ます。

 コヴィー氏は、重要度も緊急度も高い仕事を第Ⅰ領域、重要度は高いが、緊急度が低い仕事を第Ⅱ領域、重要度は低いが、緊急度は高い仕事を第Ⅲ領域、重要度も緊急度も低い仕事を第Ⅳ領域としています。

 皆さん、ファイリングはどの領域に属すると思いますか。

 「7つの習慣」には明記されていませんが、私は、ファイリングは第Ⅱ領域、すなわち、緊急度は低いけれども重要度は高い仕事に属すると考えます。

 

juyojiko1-4.jpg ファイリングは重要な仕事であることは間違いありません。しかし、今すぐやらなければいけない仕事でもないのです。現に、後回しにしている組織はいくらでも存在します。ファイリングをしないからと言って、それが理由で即座に危機的状態に陥ることはあまりありません。

 それでは、「必要な書類を探す仕事」はどこに属するでしょうか。

 これは第Ⅲ領域に属すると思うのです。お客様の要求にこたえるために、今すぐこの書類を見なければならない。緊急性が高いことに間違いはありません。

 しかし、たとえ重要な仕事でも、そのための書類探に関しては重要度は低いに属すると思います。なぜなら書類探しは全くの非生産的な仕事だからです。書類なんかサッサと見つけてすぐに本来の仕事に戻るべきでしょう。「こんなことして暇ないのに~」と思いながら書類を探した経験は誰しもお持ちだと思います。

 この、書類探しの時間を減らすためには、第Ⅱ領域である「ファイリング」の時間をとることしかありません。

 「7つの習慣」にはこの第Ⅱ領域の仕事の例として、人間関係づくり、健康維持、準備や計画、リーダーシップ、真のレクリエーション、勉強や自己啓発、品質の改善、エンパワーメントを挙げています。

 いま、本屋さんに行ってみると、この手のノウハウに関する本が溢れています。これは、本当は第Ⅱ領域の仕事に時間をとるべきだということに、皆気づいていることの証明だと思います。

 そして今、仕事術、時間術、整理術、片付けなどの本もたくさん出版されています。ファイリングはこれらのどこにも属する内容であり、今求められている第Ⅱ領域 -緊急度は低いが重要度は高い- 仕事なのです。

 

【忙しくてファイリングなんかやっている暇はない】

 「忙しくてファイリングなんかやっている暇はありません」と、言われることは良くあります。私も良く言われますし、社内の業務を改善しようとしている総務担当の方も、現場のこの言葉に幾度となく計画を頓挫させられてきた様子も見て来ました。

 要は第Ⅲ領域の仕事なのですが、これって、緊急性が高い仕事をやっているわけですし、ここで何も言えなくなってしまうわけですね。何しろ緊急度が高い仕事が目の前にあるわけですから、重要度は高くても緊急度が低いファイリングなどに時間を割くことはできないのです。

 ともすると、「ファイリングなんて暇なことやらせようなんて、現場のことを全く分かっちゃいない」みたいなことも言われたりすることもあります。ファイリングに限らず、様々な業務改善の試みはこのようにして失敗していくわけです。

 しかし、これは「7つの習慣」で言われている「反応的」な行動でしかありません。来たものに対応するだけで手一杯になってしまっているのです。緊急性の高い仕事だけ出に振り回されている間は、自分のペースで仕事ができません。来たものをこなすだけで、仕事をコントロール下に置いていないのです

 こなした時のノウハウを見える形に蓄積するようなこと(これをやれば第Ⅱ領域なんですが)もしていないので、同じミスを繰り返したりします。または別の人が同じミスをすることもあるでしょう。で、その影響を被ったりしてまたその対応 -つまり第Ⅲ領域の- 緊急度の高い仕事が降ってくる、この繰り返しです。

 こうならないためには、どこかで第Ⅱ領域の時間に投資する勇気を持つことです。

 第Ⅱ領域の仕事は効果が出るのに時間がかかることが多いですが、投資というものはそういうものです。すぐ出るの結果ばかりに左右され、長期的な投資の成果を待つことができなければ、永遠に書類探しという非生産的な時間を減らすことはできないでしょう。

 「忙しくてファイリングなんかやっている暇はない」というもっともらしい理由は、長期的な成果のために時間を投資する勇気がないことを、正当化しているにすぎません。

 

【さっそく紹介してみました】

 「7つの習慣」の「重要事項を優先する」の内容は、ファイリングをするべき理由、しなければならないことをお客様に伝える要素をとても体系だててくれたと思っています。

 私は先日行われた当社主催の公開セミナーで早速この話をしてみました。話しているときのお客様の反応もとてもよかったですし、アンケートを見てもそれは明らかでした。

 お客様にとって有益と思われる提案でも、耳を傾けて頂けなければ意味がありません。でも、そこが大変難しいのです。

 「7つの習慣」の話は小手先のテクニックではありません。根本的な解決方法ばかりです。だから、響くのでしょう。

 耳を傾けていただき、聞いていただいた方を裏切らない話、ノウハウがファイリングコンサルタントには必要だと思いますが、「重要事項を優先する」の話は大きな力を与えてくれた、そういう手ごたえを感じました。