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「ブラックの片棒」を担がないために、私たちができること ~「フェア・パーチェス」という考え方~
公認会計士まーやんの「ロジカるつぼ」
「ブラックの片棒」を担がないために、私たちができること ~「フェア・パーチェス」という考え方~
ベルギービールをこよなく愛する公認会計士。座右の銘は「できるときに、できることを、できるだけ」。
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こんにちは。今回もお読みいただきありがとうございます。
牛丼チェーン店やエステ業界など、労働法に関連したニュースが少しずつ多くなってきています。「ブラック企業」という言葉がだいぶ社会に浸透してきましたが、この言葉、wikipediaではこんな定義がされています。
ブラック企業(ブラックきぎょう)またはブラック会社(ブラックがいしゃ)とは、広義としては暴力団などの反社会的団体との繋がりを持つなど違法行為を常態化させた会社を指し、狭義には新興産業において若者を大量に採用し、過重労働・違法労働によって使いつぶし、次々と離職に追い込む成長大企業を指す。(中略)将来設計が立たない賃金で私生活が崩壊するような長時間労働を強い、なおかつ若者を「使い捨て」るところに「ブラック」といわれるゆえんがある。 また近年ではブラックな働かせ方をアルバイトにさせるというブラックバイトという派生語が登場してきている。
要するに、若者たちが搾取され、将来に希望を持てない社会。その立役者が「ブラック企業」だと世間では解釈されているようです。
今回考えたいのは、このような社会を改めようとしたとき、私たちは一体どのような行動をとるべきなのか?ということです。
「有権者」としては、投票に行くしかない。
以前このブログで紹介した、「なぜ景気が回復しても給料は上がらないのか」の著者代表である倉重公太朗氏(弁護士)は、現状の労働法体系に違和感を持ったのであれば、「まずは投票に行ってほしい」と訴えていました(関連記事)。
ブラック企業は言ってみれば「労働法の許容範囲を逸脱して、過酷な労働環境に身を置かせている企業」ということになります。このような企業が横行している実態に対して、何らかの法的な措置を講じることを求めるのであれば、立法府に働きかける・・・つまりは投票に行くことしか、ないのかもしれません。
もちろんこれは非常に直截な方法であり、正攻法だとは思います。しかし、これが唯一の方法ではない、というのが私の考えです。
「消費者」としては、「フェア・パーチェス」をしよう
政治以外のルートでブラック企業を追い込むために、私たち消費者が今すぐに行動できることは・・・ズバリ、「フェア・パーチェス」です。
英語で表記すると「Fair Purchase」。つまり、「公正な買い方」という意味です。この言葉自体、たった今自分が思いついた、オリジナルのものです(が・・・どこかに前例があるかもしれません)。
敢えて大雑把にいえば「むやみに安いものに飛びつくという消費のあり方を改め、その価値に見合う対価を、しっかり払っていこう」という考え方です。
例えば、私が企業分析をする際などに、よく引き合いにだすアイテムに「牛丼」があります。
牛丼の価格が上がったり、下がったりしていた要因は、かつては「円高/円安」でした。米国産の牛肉を使っている以上、それは非常に自然な価格変動だったわけですが、最近はむしろそういったコスト面の動きとは裏腹に、企業間での価格競争が非常に激化していました。
このような価格競争は、当然のことながら「企業努力」の結果生まれてくるものです。本来、このような企業努力による低価格化は、消費者にとっては非常に嬉しい材料です。しかし、それが誰かの犠牲の上に成り立っているとしったら・・・それでも皆さんは、安いものに飛びつきますか?
安さには、必ず理由があります。その理由に納得できないものは、必ずどこかに「コストのしわ寄せ」が来ています。それは例えば下請け企業(今は協力会社と呼ばれることが多いです)であったり、途上国の人々であったり、あるいは若者であったり・・・するわけです。
現に牛丼チェーン店の一部では、待遇が折り合わないためにアルバイト店員が集まらず、店舗を閉鎖するといった動きも出ています。店員の方に犠牲を強いる形でしか維持できない価格にもしなっているとしたら、その牛丼を食べると言う行為は「フェア・パーチェス」ではない、ということです。
「フェア・パーチェス」がもし広がっていくとしたら・・・日本の社会は、「安さ」だけを訴求しても利益が得られない社会になります。そうなれば、安さ以外の品質、サービス・・・そういう部分にしっかりと、コストをかけるようになります。それはとりもなおさず、若者たちの待遇を改善し、社会全体の幸福が増していくことにも、つながるのではないかと思うわけです。
最近、牛丼チェーン店では「プレミアム・・・」という形で、敢えて値段を上げる代わりに、牛丼の品質を訴えていく形が見られます。フェア・パーチェスの考え方からすれば、これは非常に歓迎すべき動きです。
私たちがお金を落とすからには、コストを担った人たちがちゃんとそのお金を受け取り、ちゃんと幸せになる。これができない経済は、やがて破綻すると私は考えています。
では、具体的に「フェア・パーチェス」を行動に移すためには、どんなことが必要なのか・・・それは次回以降、考えてみたいと思います。