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イギリスの食パンはなぜ不味いのか?

»2014年10月16日
元局アナの「特ダネ?」

イギリスの食パンはなぜ不味いのか?

山森 貴司

早稲田大学商学部卒 元Jスポーツアナウンサー、元群馬テレビアナウンサー兼記者。テレビ番組プロデューサー、たばこ広報団体事務局長、エネルギー広報団体、不動産会社広報PRを経て、PR会社勤務

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いささか古い話になるが、私は1996年にイギリスに留学した。

出発前から、「イギリスは食べ物がまずいからかわいそうに」などと聞かされていた私は、そうはいっても先進国なのだから食えないほどまずいわけないだろうと高をくくっていた。

その予想は見事に覆されることになる。

 イギリス人(現地の方には、イングランド人、スコットランド人、ウェールズ人と完全に国が別と思っている人が非常に多いので、一緒くたにするのは気を付けましょう。先日のスコットランドの独立を問う住民投票があったことでもわかるでしょう?)がよく言うのが「素材の味を生かしている」という言葉である。しかし、日本人から見ると、味付けが単純なだけじゃないか!と思うことが多い。また、レンジで焼くだけのピザを手作りと思っていたりと、日本人には信じられない。

 もっともびっくりしたのが、食パンのまずさだった。日本の食パンと比較すると、とにかく味気ないのだ。素材の味を感じるまでもない。食感もパサパサだった。

気になったので理由を調べてみると、それがきわめて単純な理由だった。日本の食パンには微量の食塩が含まれているのだが、イギリスの食パンにはそれがない。

日本でも最近ポピュラーになった全粒粉の食パンなどレパートリーはあるのだが味気ないのは同じである。

食塩を少量入れるかどうか、日本企業は研究を重ねたことだろう。それがなかったのだ。

だから、本場であるはずのサンドイッチもおいしく感じられない。

 

イギリスの食事がまずいのには、調味料をあまり使わず、塩コショウだけで済ましてしまうという習慣もある。同じ料理にしても、多様性がない。

現地の人々もそれには気づいているのだろう。街中には100メートル刻みに中華のテイクアウェイがあり、それに列をなす光景を何度も目撃した。

イギリスは基本夕食が夕方6時に始まるので、夜11時ぐらいになるとおなかが空く。コメが恋しかった私は足しげくそのテイクアウェイに通ったことを覚えている。

 帰国後、フランスワールドカップ観戦の際にホームステイ先に立ち寄ったとき、当時のテイクアウェイでお気に入りだったチャーハンを食べたが、とても食えたものではなかった。

日本の食事はなんておいしいのだろうと天に感謝した瞬間である。

そんな私の留学中ベスト1のレストランは、なんとマクドナルド。要するにそれだけレベルが低いのである。次が中華のテイクアウェイなので、英国料理は入らない。

確かにフィッシュ&チップスは豪快だが、調味料のモルトビネガーも独特で食べ飽きてしまうし、名物のローストビーフでさえ、グレービーソースが大味で台無しだ。

 

こんなイギリスだから、繊細な味の日本食がはやるのは必然で、ロンドンでもすでに多数の日本食レストランがあった。しかし当時は出汁がなんだかわからない怪しいラーメンもあったりしたのだが、それでも大繁盛していた。

これだけ書くとイギリスの方に怒られそうだが、人はいい人ばかりでビールも旨い。しかしビールがうまいのにおつまみがポテトチップしかないパブが何と多かったことか。

日本企業の研究熱心さがあれば、イギリスのレストランで成功するのは、他国よりはたやすいのではないかと思ってしまった。

忘れていたが、イングリッシュブレックファーストだけはうまい。焼きトマトがあんなにうまいことはイギリスで知ったし、独特な味の大豆煮も癖になる。

 

更に、フォローをしておくと、私は今でもイギリスを第二の故郷と思うくらい好きだし、サッカーやゴルフ、テニスなど多くのスポーツの発祥になった歴史の重さも素敵だと思う。

だからこそ、中華のテイクアウェイで買うのではなく、英国家庭の食事がもっとおいしくなってほしいのである。