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ナマ池上彰の衝撃 そこで学んだものは ~話にはリードをつける~

ナマ池上彰の衝撃 そこで学んだものは ~話にはリードをつける~

野原 淳

キングジムファイリング研究室でファイリングや机の整理のしかたなどの指導・提案をしています。

当ブログ「ファイリングは捨てることと見つけたり」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/jun_nohara/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


 みなさんこんにちは。キングジムファイリング研究室の野原です。

 池上彰さんのUSTREAM公開収録から、私は一体何を学んだのでしょうか。

 全てです。

 本当に。そうとしか言いようがありません。

 前回書きました通り、何もかもが初体験。池上さんの一挙手一投足が学ぶ対象として臨んだわけですから、言葉に表すことが出来ないことの方がずっと多かったのですが、文書化が可能なこともいくつかあるので、それをお話ししたいと思います。

 

まず、何よりも私が全くできていないこと

 「最初に、これを話しますよ、と伝えてから話す」

 これは池上さんがその著書「分かりやすく<伝える>技術」でも、「相手に話の地図を示そう」という見出しで最初に書いていることです。会場からの質問に答える際にも、池上さんが実践してくださいました。

 今もそうですが、私は「本題」に入るまでの前置きが非常に長いです。なにしろ、「前置き編」として、エントリー1回を費やしているのですから。

 いけないと分かっていても、これがなかなか出来ない。

 小心者である私は、このテーマで話すということを、事前に読者に正確に理解してもらってからでないと語り出せないのです。

 「私はこういう人で、こうやって生きて来ました。その中でこういういきさつでこの経験ができたのです。だからこそ、この話が出来るのです。そこで感じた最も大事なこととして、今日は...」としないと、不安で仕方ないのです。

 逆に自分が聞くときもそうです。いきなり本題に入られても、「あなた誰?」「何でその話が出来るの?」と言った、「?マーク」が飛び交い、話に集中できないのです。

 「ああ、あなたはそういう経歴の持ち主で、こういう考えを持っていて、そのうち今日のテーマはこれだから、こういう立場で今回のテーマについて物を言おうとしているんですね」という、これからインプットされる知識の「収納場所」を事前に構築しておきたいわけです。

 情報は話すペースで入って来ます。これはとんでもないスピードです。収納場所が事前に構築され、戻す場所が用意されていないと、スピードについて行けず、情報が頭の中で宙ぶらりんになってしまうのです。

 -戻す場所を決める-

 どっかで聞いた言葉ですね。そう、私のブログです。戻す場所がないものはなくなります。

 人の頭には忘却という名の濁流が常に氾濫しています。

 宙ぶらりんの知識はあっという間に流されます。

 収納場所があっても、腑に落ちる場所に納め、既に固定化された自分の知識との結束箇所を少しでも増やしておかないと、やがて流れに負けてしまいます。

 自分がそうなら、人もそうだろう。

 だから私は、収納場所を用意するだけでなく、結束場所としての突起をなるべくたくさん教えてあげて、くっつけやすくしてあげようとするわけですね。

 そういう意味では、池上さんのおっしゃる「地図」は、私が言う「収納場所」と同じだと思うんです。

 ただ、私はその地図を、視聴者の中にメチャクチャ詳細に描こうとしてしまっているんですね、不安だから。そこに、かなりの時間を費やしてしまっているわけです。

 

懐に隠した「お父さん」への反抗

 池上さんならいいですよ。

 「池上さんの話」というだけで、地下数十メートルの洪積層まで貫通した杭のように、知識の収納場所は相手の頭の中に固定されるでしょう。忘却の濁流に負けるわけがありません。

 だから、突然話に入っても大丈夫なわけです。池上さんがどんな人か、みんな知ってます。だから、内容の地図だけ渡せば十分なんです。

 でも私は、突っ張り棒程度の強度しかありません。固定化するには、ある程度の時間を頂いて、何本も設置する必要があると思ってしまうんです。

 そうは言っても、確かに聞いている人は「一体いつ始まるんだ」と、飽きてしまいますよね。本来必要なはずの事前情報も、管理できる分量を超えてはダメ、ということでしょう。

 

そうだったのか!「話にはリードをつける」

 これからは、何よりも最初に話すことをまとめて伝え、取り敢えずの収納場所だけ構築することにします。

 後の結束場所や突っ張り棒の類は、話の途中で一本一本仕組んでいくことにします。それをさりげなくやることが、話のうまさだということですよね。

 話も要るものと要らないものを分けて、要らないものは排除せよ、ということなのでしょう。

 ファイリングと同じなのかもしれません。