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会社を作ったらまっさきに目指すべきもの (新事業の話-5)

会社を作ったらまっさきに目指すべきもの (新事業の話-5)

島田 徹

株式会社プラムザ 代表取締役社長。システムコンサルタント。1998年に28歳で起業し、現在も現役のシステムエンジニア、コンサルトとして、ものづくりの第一線で活躍しつつ、開発現場のチームとそのリーダーのあり方を研究し続けている。

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事業を続けて行く上でもっとも大事なのは、自分の周りにカネの流れを作ることだ。

自分の周りでカネを還流させる。自分自身はそれほど儲からなくても、自分を中心にカネが回り始めると、いろいろな可能性が出てくる。

ただそれがすんなりできれば苦労は無い。

それは数年後の目標であって、まずは、入り(すなわち売上)を確保しなければいけない。

月並みで申し訳ないが、それが会社を作ったらまっさきに目指すべきものだ。

会社を起こす時抱いていた夢とか理想とか、いろいろあるだろうが、とりあえずそれは置いておいて、まずは最短の固定売上だ。


この記事に応募してきた新社長は、すでに会社を辞めているので、ここで悠長に構えていられない。

仕事を続けながら準備ができれば一番良かったが、そういうズルなことはできないという男なので、それはしょうがない。その性格はきっとよいことに結び付くだろう。


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ところで、世の中には、素人でも時間をかければできるものというのがある。

たとえばプログラムを組んで何かのシステムを組む、なんていうのはじっくり腰を据えてやれば、まあ大抵の人はできる。

犬小屋を作るのでも、何万ピースのジグゾーパズルでも時間さえかければ必ず出来上がる。


しかし、起業間もない時に生きていけるだけの売上を立てるというのは、じっくりやってはいられない。

生きている以上、お金は毎日確実に減っていく。営業活動をすれば交通費や通信費もかかる。


みなさんはギャンブルをやられるだろうか?

恥ずかしながら私は大学時代からしたたかに麻雀をやった。

麻雀でもパチンコでもそうだと思うが、ギャンブラーは出かける前に、今日の最悪の負け額を予想する。

まあどんなに負けても1万円か。7千円以上負けたら、次の勝負には入らないことにしよう。

などと考えて、ポケットに諭吉さんを1枚突っ込んで家を出る。

しかし経験者ならだれでも知っている。

実際は1万円持って行って、1万円分の勝負はできない。


3千円、5千円と失っていくうちに、勝負の仕方がだんだん「合理的思考」から「保守的思考」になっていく。そうなれば堅くはなるが勝てなくなり、ずるずると負けが込み、次第に完全に支離滅裂な打ち方となってくる。

そうなっては勝てるはずもない。

帰り道、はっと我に返って、とんでもない打ち方をしていたことに後悔する。

これはビジネスでも同じだ。

人はピンチになると、大脳新皮質でものを考えなくなり、もっとも原始の部位である扁桃体あたりで考えるようになるという。そこでは、単純に身の安全の確保、すなわち逃避かヤケクソな闘争しか考えられないというのだから、勝ちようがない。

これは、水野俊哉著「幸福の商社、不幸のデパート」に書かれていたことで、この書では一時期とてもカネ回りが良かったベンチャーの社長が、社内のクーデターをきっかけに借金地獄に陥った生々しい経験談が語られている。

とても面白い。会社を経営してみたいと思う人は、こういう世界を知っておいた方がいい。


幸福の商社、不幸のデパート

幸福の商社、不幸のデパート ~僕が3億円の借金地獄で見た景色~


だからカネがちゃんとあるうちに、きちんと勝たなくてはいけないんだ。

儲からなくとも、少なくとも資金をキープすることを目指す。

「キープって、ただの自転車操業じゃないか」

と思われるかもしれないが、そうではない。

その中で、PDCAを回しながら、どんどん経験は積み重なっていく。3カ月やれば、3カ月前の自分とは比較にならないくらいに成長している。

それが、もし資金が半減してくると、脳はパニックを起こしてしまうので、合理的な判断はできず、そんな状態で得た経験からはほとんど成長は見込めない。

大きな違いだ。


(新事業の話-バックナンバー)

初めての営業 (新事業の話-6)

会社を作ったらまっさきに目指すべきもの (新事業の話-5)

言う必要のないことは言わない (新事業の話-4)

持ち株比率の件 (新事業の話-3)

会社設立手続きと初めての社員 (新事業の話-2)

損益分岐点分析とコスト予測の話 (新事業の話-1)